クマール・スンダラム
核軍縮平和連合(CNDP、インド) 上級研究員

日本の世界におけるユニークなポジション、つまり「積極的な軍事手段に訴えない国」という有意義で価値ある立ち位置が、安倍政権による戦争法案によって薄められつつあります。国際紛争を好戦的手段で解決しないという憲法9条の精神が掘り崩されようとしています。

日本の政権が戦後の再軍備を正当化する口実を創り出してきたことは事実です。自衛隊と呼ばれる組織が規模の面でも装備の面でも十分に軍隊だと呼べるものであることも事実です。しかし、少なくとも日本はこれまで米国の戦争に参加してこなかった。かつての日本軍による残虐行為を深く記憶にとどめている東アジア地域で、米国が続けてきた武力の誇示に直接手を貸すことはなかった。日本国憲法が法的な縛りをかけていたからです。

votedこの数か月間、日本の何千、何万という市民が安倍晋三首相の「日本の再軍事化」に反対する意思表示を街頭で続けています。最近の世論調査で、自民党・公明党政権による法案の説明が「不十分だ」と考える人が8割を超えているのを見ても、人々の「採決ノー」の意思は明らかです。安倍首相が集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈を変更したときも、武器輸出3原則を撤廃したときも人々は反発しました。

米国の支配層の中のネオコン勢力は長く日本の再軍事化を促してきました。その狙いは中国の封じ込めという、米国自身の戦略的目的の達成です。インドも米・日・印の同盟体制の構築に積極的です。しかしこれは地域の平和と安定に対する脅威です。インドが日本による武器輸出から恩恵を被るだけではなく、インド洋で行われている共同軍事演習が治安情勢を悪化させているのです。

平和を愛する世界の市民にとって、日本は非常にユニークで貴重な、「平和国家」の実例なのです。多くの矛盾や課題は残っています。しかし、武力を用いずに国の安全と生存を保持しようというアイデアそのものが、私たちの勇気を掻き立てるのです。戦後日本の、この歴史的かつ壮大な「平和の実験」が今日、安倍晋三首相の戦争法案によって深刻な打撃を受けてしまいました。闘いの場は上院(参議院)に移り、安倍政権はそこで再び多数派を味方につける努力をするでしょう。しかし、日本の再軍事化は世界中の平和を望む市民たちの間に強い懸念を生じさせ、全地球的な反応を呼び起こさずにはいられないでしょう。

Kumar Sundaram, senior researcher and campaigner, CNDP

 

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